
アラカン紳士さん
干ししいたけを買ってまいりましたの
ビタミンDの宝庫と聞きましたわ

マダム、その干ししいたけ
まだ日に当たっておらぬかもしれませんぞ

まあ!
干してあるのに…ですの?

干すことと、日に当てることは別物でしてな
機械で乾かした品からはビタミンDが見つからなかった
という実測がございます
ガンをきっかけに「おおむねヴィーガン生活」を始めたアラカン紳士です。
ヴィーガン歴は9年になりますが、今では最高の体調で、スポーツや旅行を楽しむ生活を送っています。
植物性の食事で足りなくなりやすい栄養素が、ビタミンDです。
野菜にも果物にもほとんど入っていません。
そこで頼りになるのが、きのこです。
なかでも干ししいたけは「ビタミンDの宝庫」と言われています。
ところが日本で行われた実験では、市販の干ししいたけのビタミンDがゼロのこともあると報告されています。
分かれ目は、乾かしたかどうかではありません。
日に当てたかどうかです。
干ししいたけのビタミンDがどこで決まるのか、家庭で増やすにはどう干せばいいのかを、日本の実験データで説明します。
- 市販の干ししいたけのビタミンDが、ゼロのことがある理由
- 天日干しと機械乾燥で、ビタミンDがどれだけ変わるか
- 家庭でビタミンDを増やす、しいたけの干し方
- 鰹だしを使わない食卓で、干ししいたけが果たす役割
- きのこのビタミンDだけに頼れない理由
干ししいたけを買えばビタミンDが摂れる、とは限らない

干ししいたけはビタミンDが豊富な食品として知られています。
ところが実際に市販品を調べてみると、ビタミンDがゼロのことがあります。
ビタミンGが豊富だと言われているのに、実際には入っていない。
原因は、しいたけがビタミンDを作る仕組みにあります。

ビタミンDは、カルシウムを体に取り込むための栄養素です。
カルシウムをどれだけ取り入れても、ビタミンDが足りなければ骨まで届きません。
ビタミンDが足りない状態が続くと、大人は骨が弱くなります。
年齢が上がるほど骨折しやすくなります。
特に40代以降の女性は、閉経の前後で骨の量が減りやすい時期に入るので、注意が必要です
1日に推奨される摂取量は、成人で9.0µgです(日本人の食事摂取基準2025年版)。
ところが国の調査では、日本人の平均は6.9µgでした(令和元年 国民健康・栄養調査)。
多くの人に、ビタミンDが足りていない状態です。

埼玉大学の桐渕壽子氏が1990年に発表した研究で、市販の干ししいたけのビタミンD含有量が報告されています。
結果は0(検出されず)でした。
同じ桐渕氏が1992年に4つの市販品を測り直したところ、まったく入っていないものから、そこそこ入っているものまでありました。
同じ「市販の干ししいたけ」なのに、中身はまるで違います。
見ただけでは見分けがつきません。
差を生んだのは、しいたけが育つあいだの天候です。
しいたけに含まれるエルゴステロールという成分は、日光の紫外線を浴びるとビタミンDに変わります。
木洩れ日の当たる晴天が続けば、育つあいだに少しずつビタミンDができます。
日照の少ない時期に育てば、材料のまま出荷されます。

すでに乾燥して袋に入っているものが、いまさら日に当てただけで変わるのか。
そう思われるかもしれません。
エルゴステロールは、しいたけの細胞を包む膜をつくっている成分です。
乾かしても壊れません。
乾燥した状態のまま、残り続けます。
そこに紫外線が当たると、エルゴステロールはビタミンDに変わります。
光が引き起こす化学変化なので、しいたけが生きているかどうかも、水分が残っているかどうかも関係ありません。
だから、収穫から何か月たった干ししいたけでも、袋から出して日に当てれば変わります。

同じ研究で、生しいたけを熱風で20時間かけて乾燥させたものも測定されています。
しっかり乾いた立派な干ししいたけですが、ビタミンDはやはり0でした。
一方、同じ生しいたけを天日で乾かしたものからは、十分な量のビタミンDが検出されています。
乾かす時間ではなく、ビタミンDが作られる分かれ目は、太陽に当てたかどうかでした。
「干す」という言葉には、水分を抜く作業と、日に当てる作業の両方が含まれています。
ビタミンDに効くのは後半だけです。

日本食品標準成分表には、乾しいたけのビタミンDが可食部100gあたり17.0µgと収載されています。
成分表の数値は、複数の試料を分析した代表値です。
手元にある1袋が17.0µgを含んでいる保証は、どこにもありません。
とくに乾しいたけは、乾かし方によってビタミンDの量が大きく変化する食品です。
代表値だけを見て安心すると、「実際にはほとんど摂れていない」ということになりかねません。
ビタミンDは、植物性の食事で不足しやすい栄養素の代表です。
ヴィーガンの栄養不足については、下記の記事にまとめています。
日本の研究で見る|干ししいたけのビタミンDは乾かし方で変わる

どの乾かし方で、どれだけ差がつくのか。
桐渕氏の研究では、乾かし方を変えたしいたけのビタミンDが測定されています。
数字を見ると、ビタミンDが「増えるか増えないか」どころか「桁単位で変わる」話だと分かります。
桐渕氏の実験は1990年代のものです。
その後も国内外で研究は続いていますが、日に当てるとビタミンDが増えるという結論は変わっていません。
| しいたけの状態 | ビタミンD(1枚あたり) |
|---|---|
| 買ってきた干ししいたけ(そのまま) | 0 |
| 生しいたけを熱風で20時間乾燥 | 0 |
| 買ってきた干ししいたけに日光3時間 | 34 |
| 買ってきた干ししいたけに日光14時間 | 64 |
| 生しいたけを天日で14時間かけて乾燥 | 192 |
- 日に当てていない2つは、どちらもゼロだった
- 買ってきた干ししいたけでも、日光に3時間あてれば数字が増加する
- 同じ14時間でも、生から天日で干すほうがビタミンDが3倍多い
なお、日光を当てたときにできる量は、測る年やサンプルで大きくばらつきます。
桐渕氏が1992年に4つの市販品で測り直したときは、日光3時間で1枚あたり116〜137でした。
ここでいう1枚は、桐渕氏の論文にある「乾物で1g、中くらいのもの1枚」です。
日照の強さで動くためですが、日に当てなければゼロのままである点は変わりません。

表のいちばん下、生しいたけを天日で14時間かけて乾かしたものが群を抜いています。
同じ14時間でも、買ってきた干ししいたけを日に当てた場合は3分の1程度でした。
理由は、材料であるエルゴステロールの量です。
桐渕氏が測ったところ、生しいたけには干ししいたけの約2倍のエルゴステロールが含まれていました。
紫外線を浴びてビタミンDに変わる割合は、生も干しもほとんど同じでした。
変わる割合が同じなら、材料の多いほうができあがりも多くなります。
ただし生しいたけを完全に乾かすには、快晴の日中で合計14時間ほどかかります。
1日では終わりません。
手間を省きたいなら、買ってきた干ししいたけを3時間だけ日に当てるほうが現実的です。
ビタミンDの量を優先するなら、生から干すほうが上回ります。

日に当てる手間をかけても、ビタミンDがすぐ消えてしまうなら意味がありません。
桐渕氏の続報では、日に当てた干ししいたけのビタミンDは3か月後で約75%、6か月後でも60%以上が残っていたと報告されています。
一度日に当ててしまえば、半年は持ち越せる計算になります。
使うたびに干す必要はありません。
晴れた日に袋の中身をまとめて日に当てておけば、しばらくのあいだビタミンDを含んだ状態で保つことが出来ます。
(出典:桐渕壽子「紫外線照射条件の違いによるキノコのビタミンD生成量の比較および保存中における変化」日本家政学会誌43巻7号・1992年)

日に当てれば増える、と言われても何枚食べればいいのかが分からなければ、調理すべき量が分かりません。
成人が1日にとりたいビタミンDの目安量は9.0µg、この記事で使っている単位に直すと360 IUです。
中くらいの干ししいたけ1枚は、およそ乾物1gにあたります。
自宅ではかりを使えば、買ってきたしいたけにどれくらいのビタミンDが含有されているかが分かります。
| しいたけの状態 | ビタミンD(1枚あたり) | 1日の目安量に必要な枚数 |
|---|---|---|
| 日に当てていない干ししいたけ | 0〜79 IU | ゼロなら何枚食べても意味がない |
| 日光3時間を当てた干ししいたけ | 116〜137 IU | 約3枚 |
| 生から天日で14時間干したもの | 192 IU | 約2枚 |
| 日に当てて6か月保存したもの | 88 IU | 約4枚 |
日光3時間の116〜137は、4つの市販品を測った範囲です。
日照の強さでできる量は変わるので、枚数はおおよその見当になります。
クヌギの木で育つしいたけ

大分県は乾しいたけの生産量が、全国一の産地です。
大分のしいたけの多くは、クヌギの原木にしいたけの菌を植えて育てる原木栽培でつくられます。
木を伐って、菌を打ち込んで、収穫まで2年ほど待つ育て方です。
岐阜県の原木栽培・天日干しの干ししいたけを測った研究では、100gあたり86µgのビタミンDが見つかっています。
同じ研究で、ほかの国産の原木栽培は16µg、中国産の菌床栽培は8.7µgでした。
育て方と乾かし方で、これだけ差がつきます。
原木は伐ったあと切り株から新しい芽が出て、15年ほどでまた原木に使える太さに育ちます。
伐って、また育てて、また伐る。
森を減らさずに続けられる仕組みです。
スーパーの棚では「干し椎茸」と漢字で並んでいることが多いのですが、袋に「原木栽培」と書いてあるかどうかを見てみると、育ち方の違いが分かります。
家庭でビタミンDを増やす、しいたけの干し方

買ってきた干ししいたけを日に当てるだけで、ビタミンDは増えます。
特別な道具は要りません。
ただし当て方には条件があります。
向きと、場所と、時間です。
3つのうちどれかを外すと、ビタミンDは思ったほど増えません。
順に説明します。

しいたけのかさの裏には、ひだが並んでいます。
エルゴステロールは、ひだの部分に多く含まれています。
桐渕氏の研究では、紫外線をかさの表側に当てた場合と、ひだ側に当てた場合が比較されています。
ひだ側に当てたほうが、約3倍のビタミンDが生まれました。
2008年に報告された別の研究でも、しいたけのひだの部分には、傘の部分の約3倍のビタミンDができていました。
国も年代も違う研究で、同じ結果が出ています。
並べ方を変えるだけで、ビタミンDが3倍です。
ざるに広げるときはかさを伏せがちですが、逆にして、ひだを空に向けて並べます。

ビタミンDを作るのは、紫外線のなかでもUV-B(日焼けを起こすほうの紫外線)と呼ばれる波長です。
日本応用きのこ学会誌に報告された研究でも、太陽の光と同じUV-Bを当てたときに、ビタミンDがいちばんよく生まれることが分かっています。
ここで問題になるのが窓ガラスです。
UV-Bは窓ガラスでさえぎられ、室内に届く量は大きく減ります。
窓辺の日だまりは暖かくても、ビタミンDを作る光はほとんど届いていません。
ざるは屋外に出しましょう。
(出典:田中徳夫ほか「ビタミンD₂強化シイタケ製造装置の開発」日本応用きのこ学会誌10巻4号・2002年)

短時間で十分という説明を見かけますが、研究で実際に日に当てていた時間は、もっと長めです。
桐渕氏の実験では、9月の快晴の日、午前10時から午後3時のあいだに直射日光が当たった時間を数えています。
買ってきた干ししいたけなら3時間、
生しいたけを完全に乾かすなら合計14時間必要です。
ここでいう3時間や14時間は、直射日光が当たっていた時間だけを指します。
ざるを置いたまま放っておくと、影が動いて途中から日陰に入ります。
日が当たっていた時間だけを足してください。
- 晴れの日を選ぶ
- 夏場は虫がつくことがあるので、干し網か洗濯ネットをかぶせる
- 洗ってから干さない
水を含むと乾きにくくなり、旨みも流れ出る。
汚れは乾いた布で払う程度でよい

日に当てるかどうかで中身が変わるなら、天日干しの商品を選べばいい。
そう考えたくなりますが、袋を見ても判断できません。
乾しいたけに表示が義務づけられているのは、
・名称
・原材料名(原木栽培か菌床栽培か)
・原料原産地名
・内容量
の4つです。
乾かし方を書く義務はありません。
原木か菌床かは書いてあるのに、ビタミンDを左右する乾かし方は分からない、ということになります。
例外は、袋に「天日干し ビタミンD₂強化」(D₂は、きのこがつくるビタミンDの型のこと)と自分から書いている商品です。
桐渕氏が大分産の同じ表示のある商品を測ったところ、1枚あたり約85 IU が含まれていました。
表示のない商品を買ったなら、自分で日に当てるのが確実です。
【やってみた】生しいたけを、2日かけて天日で干した

数字を並べただけでは、実際にできるかどうかまでは分かりません。
生しいたけを生から干すと合計14時間かかる、1日では終わらない。
そう書いた以上、自分でやってみることにしました。
2026年8月の2日間、大分県産の生しいたけを、自宅のウッドデッキで天日に干しました。
1日2枚でビタミンDの目安量を満たす、いちばん効率のいい干し方です。
使った道具、かかった時間、途中で気をつけたことを、そのまま書きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料 | 大分県産 生しいたけ(菌床栽培)・小ぶりのものが中心 |
| 道具 | 4段の吊り下げ式の干し網 |
| 並べ方 | 切らずに丸のまま・かさの裏(ひだ)を上 |
| 場所 | 自宅のウッドデッキ |
| 1日目 | 12時ごろ〜17時ごろ(約5時間) |
| 2日目 | 7時〜17時(約10時間) |
| 合計 | 約15時間/2日 |
| 夜のあいだ | 屋内に取り込み、干した状態のまま一晩 |

買ったのは、地元のスーパーに並んでいた大分県産の生しいたけです。
お徳用の袋に入った、小ぶりのものが中心でした。
袋には「菌床」と書かれていました。
大分は原木栽培の産地として知られていますが、日常の買い物で手に取るのは菌床栽培のものも多く、私が選んだのもそちらです。
干し網は、4段の吊り下げ式を使いました。
しいたけは切らずに丸のまま、かさの裏のひだを空に向けて並べます。
洗っていません。
水を含ませると乾きが遅くなるうえ、旨みも流れ出てしまうからです。
並べ終えたら、あとは日の当たる場所に吊るすだけです。
準備にかかった時間は、袋を開けてから10分ほどでした。

干した時間は、1日目が12時ごろから17時ごろまでの約5時間、
2日目が7時から17時までの約10時間で、
合計およそ15時間でした。
桐渕氏の実験は、9月の快晴の日、午前10時から午後3時のあいだに直射日光が当たった時間を数えて14時間です。
私が干した15時間には朝の7時から10時までと夕方が含まれるので、同じ条件でやったとは言えません。
時間の数字だけを並べておきます。
デッキに吊るしたままにすると、時間とともに影が動いて日陰に入ってしまいます。
私は数時間おきに干し網の位置を移し、常に直射日光が当たる状態を保ちました。
とはいえ、特別なことはしていません。
洗濯物を干すときや、庭に出たついでに網をずらす程度です。
リビングからウッドデッキがすぐなので、思い出したときに動かすだけで足りました。
夜のあいだは屋内に取り込みました。
干し網ごとリビングに置いて、そのまま吊るしておきます。
外に出したままだと夜露で湿って、せっかく抜けた水分が戻ってしまいます。
2日がかりで干すときは、ここだけ気をつけます。
正直に書くと、部屋に入れた直後はしいたけの匂いが少ししました。
窓を開けて換気すれば気になりません。
気になる方は、玄関や使っていない部屋に置くほうが無難です。

2日目の17時に取り込んで、乾燥は終わりました。
仕上がりは、かさのふちが内側にくるりと丸まり、軸にはシワが寄っています。
指で押しても弾力がなく、かたい手ざわりに変わりました。
生のときのふっくらした姿とは別物です。
2日でしっかりと乾きました。
ただし、丸のまま乾いたのは私が使ったしいたけが小ぶりだったことが効いています。
大きくて肉厚のものは水分が多いぶん、もっと時間がかかるはずです。
厚みのあるものを干すなら、半分に切ってから並べるほうが確実です。
家庭ではビタミンDの量を測れません。
今回の15時間で実際にどれだけ増えたのかは、私には分かりません。
分かるのは、桐渕氏の実測で生から天日で干したもののビタミンDが、買ってから日に当てたものの3倍だったということだけです。
数字は研究に任せて、ここでは干せたという事実だけを書いておきます。
鰹だしが使えない食卓で、干ししいたけが要になる

植物性の食事に切り替えて、いちばん困るのがだしです。
かつお節も煮干しも使えません。
味が決まらない、と感じる場面が増えます。
そこで活躍するのが干ししいたけです。
ビタミンDとは別の理由で、干ししいたけは鰹だしを使わない台所では代えのきかない食材になります。

だしの旨みは、大きく3つの成分に分かれます。
・昆布やトマトに多いグルタミン酸
・かつお節や煮干しに多いイノシン酸
・そして干ししいたけのグアニル酸
です。
グルタミン酸は昆布のほかにも入っている食材が多く、イノシン酸も魚介や肉に広く含まれています。
ところがグアニル酸を多く含む食材は、干ししいたけがほぼ唯一です。
しかし、グアニル酸は、生しいたけにはほとんど含まれていません。
乾燥させたあと、水で戻して火にかけたときに生まれます。
干ししいたけを強くおすすめするのは、植物性の食卓で使える旨みの種類が1つ増えるからです。

昆布のグルタミン酸と、干ししいたけのグアニル酸。
グルタミン酸とグアニル酸を合わせると、旨みは足し算ではなく掛け算になります。
旨みの相乗効果と呼ばれる現象で、和食が昆布とかつお節を合わせてきたのも同じ理屈です。
かつお節のイノシン酸を、干ししいたけのグアニル酸に置き換えると、植物性のまま同じ構造を再現できます。
精進料理が昆布と干ししいたけを組み合わせてきたのは、動物性を避けた結果の妥協ではありません。
旨みの設計として理にかなっているのです。

戻すときは、冷たい水を使います。
いちばんもったいないのが、ぬるま湯です。
干ししいたけに入っているのは、旨みそのものではなく旨みのもとです。
ぬるま湯だと、旨みのもとが火にかける前に無くなってしまいます。
冷たい水なら、旨みのもとは火にかけるまで残ります。
あいち産業科学技術総合センターの測定があります。
4℃の水で一晩戻した干ししいたけは、火を通すと旨みが出ました。
40℃のぬるま湯で3時間戻した干ししいたけは、火を通しても旨みが出ませんでした。
冷蔵庫で一晩が目安です。
前の晩に、水を張った容器へ干ししいたけを入れておけば、朝には戻っています。
戻し汁も捨てずに、干ししいたけごと火にかけます。
ただし、旨みとビタミンDは別の成分で、加熱は全く異なる結果をもたらせます。
旨みは加熱で生まれますが、ビタミンDは長く煮ると分解すると報告されるのです。
ですので、干ししいたけと戻し汁は、火にはかけますが長くは煮ません。
植物性の調味料で味を決める話は、下記の記事にも書いています。
干ししいたけの旨みを使った自家製だれも紹介しています。
捨てないための工夫

精進料理には、食材を無駄にしないという考え方が根にあります。
干ししいたけの戻し汁を捨てずに使うのも、無駄にしない工夫の一つです。
煮物の煮汁に使い、余れば汁物に回す。
旨みが濃いので、少し手を加えるだけで味が変わります。
戻し汁の底には、細かい砂や汚れが沈んでいることがあります。
使うときは、静かに上澄みだけを使って下さい。
一晩水に浸けておくだけの作業が、翌日の味を深めてくれる。
手間の少ない工夫が、長く受け継がれてきました。
正直な話|きのこのビタミンDだけには頼らない

干ししいたけを日に当てればビタミンDは増えます。
ただ、きのこだけでビタミンDの必要量をまかなおうとすると無理が出ます。
ビタミンDには2つの種類があり、きのこに含まれるほうには弱点があるからです。
都合の悪い部分も含めて説明します。

ビタミンDには、きのこに含まれるD₂と、魚や卵に含まれるD₃があります。
人の皮膚が日光を浴びて作るのもD₃です。
同じ量をとった場合、D₃のほうが血液中のビタミンD濃度を高く、長く保つことが複数の研究で報告されています。
D₂が役に立たないわけではありませんが、効率で見るとD₃に及びません。
2023年には、紫外線を当てたきのこを食べた人の研究6件・663人分をまとめた報告が出ています。
血液中のD₂は、どの研究でも増えていました。
ただしビタミンDの総量としては、増えるところまでは届いていません。
植物性の食事を続けている場合、D₂とD₃の効率の差は無視できません。
干ししいたけを日に当てて量を増やしたうえで、ほかの手段も併せて考える必要があります。
ビタミンDは骨の材料であるカルシウムの吸収に関わります。
40代以降の骨の話は、下記の記事で詳しく扱っています。

食事以外に、自分の皮膚で作るという方法があります。
国立環境研究所は、国内11地点で「ビタミンDを作るのに必要な日光浴の時間」を毎日公開しています。
季節と時刻と地域によって必要な時間は大きく変わり、冬の北日本では夏の何倍もかかります。
しいたけを日に当てるついでに、自分も少し外に出る。
しいたけのビタミンDも、体の中で作られるビタミンDも、増やすのは同じ太陽です。
日焼けの心配がある場合は、手のひらを向けるだけでも違います。
長時間の日焼けを勧めるものではありません。
(出典:国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」/お住まいに近い地点を選ぶと、その日の必要な時間が見られます)

ビタミンDが足りているかは、見た目や体調では判断できません。
血液検査で数値を測れば、はっきりします。
健康診断の標準項目には入っていないことが多いため、気になる場合は医療機関で相談します。
サプリメントで補う選択もあります。
植物性のD₂だけでなく、地衣類から作られたD₃のサプリメントも販売されています。
持病があり薬を飲んでいる場合は、自己判断で始めずに、かかりつけ医か薬剤師に相談してください。
秋は体調を崩しやすい季節です。
きのこを含めた秋の食べ方は、下記の記事にまとめています。
干ししいたけとビタミンDのよくある質問(FAQ)

- 薄切り(スライス)の干ししいたけでも、ビタミンDは増えますか?
- 増えます。
むしろ薄切りのほうが効率がよいことが分かっています。
2008年に報告された研究では、薄切りにして紫外線を当てるほうが、丸ごとのしいたけに当てるより多くのビタミンDが生まれました。
紫外線が当たる面が広くなるためです。
丸ごと干す場合は、重ならないように広げてください。
- マンションのベランダでもできますか?
- できます。
直射日光が当たる時間帯があれば十分です。
手すりの内側は影になりやすいので、日の当たる高さに台を置いて、その上にざるをのせてください。
風よけのガラスやアクリル板ごしになる場所は避けます。
- 水で戻すと、ビタミンDは戻し汁に流れ出てしまいますか?
- ほとんど流れ出ません。
ビタミンDは油に溶ける性質で、水には溶けにくいからです。
食品成分表で「ゆでた乾しいたけ」の数値が低く見えるのは、水を吸って重くなり、100gあたりで薄まるためです。
戻し汁は旨みのために使い、しいたけ本体も食べてください。
- 日に当てたかどうかは、見た目で分かりますか?
- 見た目ではほとんど分かりません。
色も形も変わらないので、袋に入っていた状態のものと、自分で日に当てたものは同じように見えます。
いつ日に当てたのかを、自分で覚えておくのが確実です。
- しいたけ以外のきのこでも、同じことが起きますか?
- 起きます。
エルゴステロールはきのこ類に広く含まれています。
桐渕氏の研究では、エノキタケは紫外線を当てたときにしいたけの約6倍のビタミンDを生成しました。
まいたけやひらたけでも同じ原理が働きます。
- 乾かさずに、生のまま日に当てるだけでもいいですか?
- 構いません。
桐渕氏の報告では、生しいたけを3時間日に当てると水分が約2%減って、むしろ調理しやすくなると書かれています。
保存が目的でなければ、当てたその日に調理して食べる方法もあります。
まとめ|日に当てた干ししいたけが、ビタミンDの宝庫になる

干ししいたけがビタミンDの宝庫かどうかは、袋の中身が日に当たったかどうかで決まります。
日本の実測では、市販の干ししいたけのビタミンDはゼロのことがあり、熱風で20時間乾かしたものもゼロでした。
一方で、買ってきた干ししいたけでも3時間日に当てれば1枚あたり100を超えました。
生しいたけを天日で乾かしたものは、同じ研究のなかで、買ってから日に当てたものの3倍でした。
やることは3つだけです。
かさの裏を上に向けて、屋外に出して、3時間置く。
日に当てた干ししいたけなら、1日3枚ほどでビタミンDの目安量を満たします。
一度できたビタミンDは、6か月後も6割以上が残ります。
晴れた日にまとめて当てておけば、半年は持ち越せます。
そして干ししいたけは、鰹だしを使わない台所にとって、グアニル酸という旨みを持ち込める唯一の食材でもあります。
昆布と合わせれば、旨みは掛け算になります。
次に晴れた日、袋の中身をざるに広げてみてください。
できる範囲で構いません。
参考・出典
・桐渕壽子「紫外線照射による各種キノコ中のビタミンD₂含量に関する研究」日本家政学会誌 41巻5号 401-407・1990年
・桐渕壽子「紫外線照射条件の違いによるキノコのビタミンD₂生成量の比較および保存中における変化」日本家政学会誌 43巻7号 649-654・1992年
・田中徳夫ほか「ビタミンD₂強化シイタケ製造装置の開発」日本応用きのこ学会誌 10巻4号 213-220・2002年
・中莖秀夫「乾燥シイタケのグアニル酸について」あいち産業科学技術総合センターニュース 2022年3月号
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
・消費者庁「食品表示基準」
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
・国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」
・Ko JA ほか「Effect of UV-B Exposure on the Concentration of Vitamin D₂ in Sliced Shiitake Mushroom」Journal of Agricultural and Food Chemistry 56巻10号・2008年
・河合香帆、三浦功太郞「原木栽培干し椎茸中のビタミンD₂によるCa吸収率に関する研究」化学と生物 54巻2号・2016年
・Rondanelli M ほか「Vitamin D from UV-Irradiated Mushrooms as a Way for Vitamin D Supplementation」Antioxidants・2023年
