
アラカン紳士さん
わたくし、野菜を重曹の水で洗っておりますの
ちゃんと、農薬は落ちているのでしょうか

マダム…
正直に申せば、こすり洗いで落ちる量はごくわずかですぞ

まあ!?
では洗っても無駄ということですの
少し怖くなってまいりました

ご心配は無用です
落ちない理由も、本当に効く方法も、実測の数字で分かっておりますぞ
野菜は皮ごと、丸ごと食べたほうが栄養は多い。
私は繰り返し書いてきましたが、必ず返ってくるのが農薬の心配です。
私は数年前から、野菜を重曹の水に短くつけてから使っています。
落ちていると思って続けてきました。
けれど実測データを調べてみると、こすり洗いで落ちる農薬は、中央値でわずか2%でした。
洗い方が足りないからではありません。
農薬は、洗って落ちる場所にないのです。
農薬が落ちない理由、本当に減る方法、そして皮ごと食べたい人が現実的にできることを、公的なデータをもとに正直にまとめます。
- 野菜をこすり洗いしても農薬が落ちない理由
- 洗うより効くのは何か(実測値で比較)
- 野菜と果物で農薬が残りやすい場所の違い
- 残留基準が「洗わない状態」で決められていること
- 皮ごと丸ごと食べたい人の、現実的な選び方
- こすり洗いで落ちる農薬は中央値2%
- 外側の葉を1枚めくれば約75%、皮をむけば平均88%減る
- 皮ごと食べたいなら、洗い方より育て方で選ぶ
野菜の農薬は、洗っても落ちない

農薬は野菜の表面についていて、洗えば流れていく。
けれど実際に測ったデータは、まったく異なっていました。
まず、洗浄の実測値から見ていきます。

東京都健康安全研究センターの永山敏廣氏がまとめた報告に、洗浄の実測データがあります。
水道水で湿らせたスポンジで、野菜や果物の表面を強めに5回こすり洗いする。
25作物82検体、延べ356件分の農薬を調べた実験です。
| 測定した項目 | 結果 |
|---|---|
| 農薬の除去率(平均) | 10% |
| 農薬の除去率(中央値) | 2% |
| 除去率が10%以下だった検体 | 全体の74% |
| 最もよく落ちた農薬(キャプタン)の残存率 | 63% |
※永山敏廣「食品中の残留農薬―残留農薬は調理加工により減少するか―」(日本調理科学会誌、2009年)に紹介された上野らの調査にもとづきます。
結果は、除去率の平均が10%、中央値はわずか2%でした。
全体の74%は、除去率が10%以下にとどまっています。
最もよく落ちたキャプタンという農薬でさえ、63%が残りました。
スポンジで強くこすって、出てきた数字です。
流水でさっと洗う程度なら、さらに少ないと考えるのが自然です。

りんごを布で磨くと、つやが出ます。
野菜や果物の表面が、うすいロウの膜に覆われているためです。
農薬の中でも油になじむ性質を持つものは、散布されたあと、ロウの膜にすばやく溶け込みます。
表面にのっているのではなく、膜の中に入り込んだ状態です。
油性ペンで書いた線が水拭きで消えないように、水は油になじむものを動かせません。
こすり洗いで落ちるのは、泥とほこり、そしてついたばかりのごく一部にとどまります。

もう一つ、水になじむ性質を持つ農薬があります。
散布された直後であれば表面にあるため、洗えば落ちます。
ただし時間が経つにつれて、農薬は少しずつ野菜の内部へ移っていきます。
土に使われた農薬が根から吸い上げられ、作物全体に回ることもあります。
スーパーに並ぶまでには、収穫から日が過ぎています。
表面をどれだけ丁寧に洗っても、すでに内部へ移ったものには届きません。
落ちにくいのは、洗い方が足りないからではないのです。
なお、水に溶けやすい農薬ほど落ちやすい、という単純な法則も成り立ちません。
同じ報告の中で、洗浄による除去率と水への溶けやすさに一定の関係は見られなかった、とされています。

野菜専用の洗浄水や洗浄剤には、「残留農薬を落とす」と書かれた商品があります。
私も気になって、メーカーが公開している試験データを読んでみました。
公開されていたのは、水道水と比べて洗浄液にどれだけ農薬が出てきたかという数値でした。
水道水よりは多く出ています。
ただし、洗う前の野菜に残っていた量のうち何%が減ったのかは示されていません。
落ちたことは分かっても、落ちた割合は分からない数字です。
もう一つ、気づいたことがあります。
数値は農薬よりも、防カビ剤(輸入の柑橘に、収穫後、皮の表面へ処理される薬剤)のほうが大きく出ていました。
表面にのっている薬剤は落ち、膜の中や内部に移った農薬は落ちない。
線引きは、専用の洗浄水を使っても変わらないようです。
メーカー自身も、作物の表面や内部へ浸透した農薬を完全に除去することはできない、と注意書きに明記していました。

では、野菜用の洗浄水を買えばよろしいの
売り場には、農薬が落ちると書いてありますわ

マダム、表面の汚れは落ちますぞ
されど皮の内側までは、届きませぬ

不安に感じた方もいるかもしれません。
けれど、大事な前提があります。
永山氏は報告の中で、残留基準の決め方に触れています。
基準は、泥は落とすものの洗わずに、果実では食べない果皮まで含めて検査した結果で、守られているかを判断されるものが多い、と。
つまり残留基準は、家庭で洗うことを計算に入れていません。
洗わないまま測って基準内であることが、あらかじめ確かめられています。
東京都が5年間の平均・年およそ800件で行った検査では、国産品の基準超過は0%、輸入品でも1%未満でした。
永山氏自身も、現在市販されている農産物に残留する農薬量は非常に少なく、通常の食べ方で直ちに健康に悪影響を及ぼすとはほとんど考えられない、と結んでいます。
農薬は、虫やカビの害から作物を守るために使われています。
使わなければ収穫量は落ち、値段は上がり、カビによる別のリスクも出てきます。
農薬をゼロにする話ではなく、必要な場面で使われたものが、どれだけ体に入るかという話です。
洗っても落ちない。
けれど、落とさなければ危ないわけでもない。
二つを分けて考えるところから始まります。
残留基準は、一生食べ続けても大丈夫な量から決まる

残留基準と聞くと、ぎりぎりの安全ラインのように感じるかもしれません。
実際の決め方は逆です。
まず動物実験で、生涯にわたって毎日食べ続けても影響が出ない量を調べます。
調べた量にさらに安全のための余裕を持たせ、人が一日に摂ってよい量が決められます。
食品ごとの基準値は、日本人が実際に食べる量を積み上げても、一日に摂ってよい量の範囲に収まるように設定されています。
基準値を少し超えたからといって、すぐ健康を害する量ではありません。
基準は「危険の境界線」ではなく、危険からずいぶん手前に引かれた線です。
農薬が本当に減る方法と、減らない場所

洗っても落ちないなら、家庭でできることはないのか。
打つ手はあります。
同じ報告の中に、はっきり効く方法の数字が出ています。
洗う以外に効く方法と、どうしても届かない場所を、順に見ていきます。

皮をむいた場合のデータもあります。
29作物95検体、延べ464件分の農薬を調べた結果です。
除去率が90%以上だったものが全体の79%、平均で88%、中央値は100%でした。
中央値100%とは、半分以上の場合で、むいたあとの果肉から農薬が検出されなかったという意味です。
洗って10%、むいて88%。
桁がひとつ違います。

キャベツを葉1枚ずつに分けて測った調査もあります。
最も外側の葉の濃度が一番高く、2枚目では半分以下、4枚目からは非常に低くなりました。
ほとんどが、外から3枚目までに残っていたことになります。
外側の葉を1枚取り除くだけで、計算上はおよそ75%が減ります。
結球する野菜では、外葉を1枚めくる手間が、どんな洗い方よりも効きます。
| 方法 | 農薬が減る割合 | 栄養への影響 |
|---|---|---|
| 流水でこすり洗いする | 平均10%・中央値2% | 変わらない |
| 皮をむく | 平均88%・中央値100% | 食物繊維とミネラルを失う |
| 外葉を1枚取る(結球野菜) | およそ75% | 色の濃い葉の栄養を失う |

ただし、皮をむけばすべて解決するわけでもありません。
カビを防ぐ殺菌剤や、虫を防ぐ殺虫剤のうち、水になじみやすい4種類では、皮をむいたあとの果肉からも平均で20〜40%が検出されました。
表面から内側へ移りやすい性質を持つためです。
農薬の名前を覚える必要はありません。
4種類のうち3種類は、今も日本で登録がある殺菌剤です。
押さえておくのは、国が使用を認めた農薬でも、皮をむいても届かないものがあるという事実だけです。
表皮から内側へ移った農薬、土から根が吸い上げて作物全体に回った農薬は、皮をむいても取り除けません。
洗っても、むいても届かない部分は残ります。

農薬がいちばん多く残っているのは、皮と外葉です。
そして栄養がいちばん多いのも、皮と外葉です。
ゴーヤの部位を分けて調べた2024年の研究では、食物繊維とミネラル全体は皮で最も多くなっていました。
キャベツの外葉も、内側の葉より色が濃く、栄養が豊富です。
農薬を減らすいちばんの方法は、栄養をいちばん捨てる方法でもある。
丸ごと食べたい人にとって、洗い方の話は行き止まりになります。
捨てる場所に栄養が寄っているという話は、ゴーヤの記事で部位ごとの研究をくわしく紹介しています。
野菜と果物で違う、農薬の残りやすい場所

農薬は、作物のどこにでも均等に残るわけではありません。
種類ごとに、残りやすい場所がはっきり分かれています。
知っておくと、下ごしらえで手を入れる場所が決まります。
果物、穀物、そして調理法の順に見ていきます。

りんごを部位ごとに測った調査では、農薬がいちばん濃かったのは柄のくぼみ、次が皮でした。
果肉は、皮の10分の1しかありません。
ただし、農薬の濃さと、口に入る量は別の話です。
りんご1個のうち、皮の重さは10〜20%ほどしかありません。
皮は農薬の濃さが高いけれど、食べる量はごくわずか。
果肉は農薬の濃さが低いけれど、食べる量が多い。
結果として、皮ごと食べたときに口に入る農薬は、皮からの分と果肉からの分がだいたい同じ量になります。
つまり、皮をむいても、口に入る農薬は半分になるだけです。
皮をむくより、いちばん濃い柄のくぼみを切り落とすほうが、手間の割に効きます。

穀物では、外側の部分に農薬が集まります。
米では糠に多く残り、白米の部分は全体のおおむね20%以下でした。
小麦も同じで、ふすまに多く残り、小麦粉への移行はごくわずかです。
玄米を精米して研ぎ、炊いたあとの残存量は6%以下まで下がります。
米ぬかを毎日の食卓に取り入れているなら、原料の米がどう育てられたかを確かめて選びたいところです。
外側を丸ごといただく食べ方だからこそ、素材の選び方が効いてきます。
| 食べもの | 農薬が多く残る部分 | 少ない部分 |
|---|---|---|
| りんごなどの果物 | 柄のくぼみ、果皮 | 果肉(果皮のおよそ10分の1) |
| 米 | 米ぬか(外側) | 白米(全体のおおむね20%以下) |
| 小麦 | ふすま(外側) | 小麦粉(ごくわずか) |
米ぬかパウダーを3か月続けた記録では、産地や原料の選び方についても書いています。

調理法によっても、残る量は変わります。
なすで調べた実験では、水で煮た場合が最も少なく、次いで焼いた場合、油で炒めた場合が最も多く85%以上が残りました。
ほうれんそうでも同じ傾向で、ゆでるより炒めるほうが多く残っています。
加熱の時間が長いほど、残る量は減っていきました。
油は農薬を抱え込みます。
農薬を減らしたい日は、油で炒めるより、ゆでたり煮たりするほうが理にかなっています。
| 調理法 | 農薬の残り方 |
|---|---|
| 油で炒める | 85%以上が残る(最も多い) |
| 焼く | 炒めるより減る |
| ゆでる・煮る | 最も減る |
「無農薬」という表示は、実は使えない

野菜を選ぶとき、「無農薬」の文字を探す人は多いと思います。
私自身も長く、無農薬を目印にしてきました。
ところが農林水産省のガイドラインでは、「無農薬」「減農薬」といった表示は原則として使えないことになっています。
農薬を一切使っていないことを買う側が確かめる手段がなく、土に残った農薬まで含めて証明できないためです。
代わりに使われるのが、「有機JAS」と「特別栽培農産物」です。
有機JASは登録機関の認証を受けたもの、特別栽培農産物は農薬と化学肥料を地域の慣行の半分以下に抑えたものを指します。
売り文句としての「無農薬」ではなく、認証の名前で確かめる。
選ぶときの目印は、そちらのほうが確かです。
我が家の洗い方と、農薬を減らす野菜の選び方

数字を並べてきましたが、私自身が台所で何をしているかも書いておきます。
胸を張れるやり方ではありません。
調べたことで、続け方が少し変わりました。

私は数年前から、野菜を重曹を溶かした水に短い時間つけています。
ボウルに水を張り、重曹を入れて、さっとくぐらせる程度です。
特別なきっかけがあったわけではなく、体によさそうだから続けてきました。
正直に書くと、農薬は落ちていると思っていました。

今回、重曹で洗ったときの実測データを探しましたが、見つけられませんでした。
ですから、重曹に意味がないとは言えません。
ただ、水でこすっても中央値2%という数字と、農薬がロウの膜に溶け込み、内部へ移っているという理由を並べると、洗うことに大きな期待をかけられないと感じました。
やめてはいません。
変えたのは、洗う目的です。
農薬を落とすためではなく、泥やほこりを落とすために洗っています。

私は野菜を皮ごと、ワタごと、丸ごと食べたいと考えています。
けれど農薬をいちばん減らす方法は、皮と外葉を捨てることでした。
洗い方でも、むき方でも、望んでいる食べ方には届きません。
だから手をかける場所を、台所から買うときへ移しました。
洗って落とすのではなく、入口で選ぶ。
有機JASや特別栽培で育てられた野菜なら、皮まで気持ちよく使えます。
そもそも国産と輸入で農薬の基準や検査体制がどう違うのかは、別の記事で数字を並べて比較しています。
近所のスーパーで旬の有機野菜を探すのは、なかなか骨が折れます。
私は新鮮な有機野菜を宅配で届けてもらう習慣を続けていて、丸ごと使う前提の買い物としては、いちばん続けやすい方法でした。
※本記事にはプロモーションが含まれます。
実際に届いた中身と鮮度、正直に感じたデメリットは、お試しセットのレポートにまとめています。
野菜の農薬の落とし方に関するよくある質問

本文で触れきれなかった疑問をまとめます。
台所で迷ったときの参考にしてください。
- 流水では、何秒くらい洗えばよいですか?
- 時間を延ばしても、落ちる量はあまり変わりません。
泥や土、ほこりを落とす目的で、20〜30秒ほど流水で洗えば十分です。
長くこすり続けるより、外側の葉を1枚めくるほうが確実に減らせます。
- 有機JASの野菜なら、農薬はまったく使われていないのですか?
- 有機JAS(登録機関の認証を受けた有機農産物)でも、規格で認められた農薬は使えます。
硫黄や銅、除虫菊など天然由来のものが中心で、化学合成された農薬は原則として使いません。
農薬がゼロという意味ではありませんが、使える種類が厳しく限られている点が、通常の栽培との違いです。
- 輸入のレモンやオレンジの皮は、使わないほうがよいですか?
- 輸入の柑橘は、輸送中のカビを防ぐ薬剤が果皮に使われていることがあります。
皮を料理やお菓子に使いたい場合は、防カビ剤不使用と表示のあるものか、国産のものを選ぶと安心です。
- 皮をむくと、栄養も減ってしまいますか?
- 皮には食物繊維やミネラルが多く含まれるため、むけば減ります。
毎回むく必要はありません。
育て方が確かな野菜は皮ごと、産地や栽培方法が分からないものは外側の葉を取る、と使い分けるのが無理のない方法です。
おわりに|野菜の農薬と、どう付き合うか

野菜の農薬は、洗ってもほとんど落ちません。
本当に減らしたいなら、皮をむくか、外側の葉を取ることです。
けれど皮と外葉には、栄養もいちばん多く含まれています。
日本で売られている野菜の残留量はごくわずかで、洗わずに測っても基準の中に収まっています。
怖がって皮を捨てるより、育て方の分かる野菜を選んで丸ごといただくほうが、私には気持ちのよい食べ方でした。
私は農薬を敵だと思っていません。
減らしたいのは、不安だからではなく、皮も外葉もワタも捨てずに食べたいからです。
そして、いろいろな野菜を広く食べること。
一つの作物に偏らなければ、特定の農薬を取り込み続けることもありません。
永山氏の言葉です。
腸を整える食事の全体像は、和食とヴィーガンを掛け合わせた記事でくわしく説明しています。
参考・出典
・永山敏廣「食品中の残留農薬―残留農薬は調理加工により減少するか―」『日本調理科学会誌』42巻2号 135-140頁(2009年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/42/2/42_135/_pdf
・東京都保健医療局「野菜には、どの程度農薬がついているのですか?
」食品安全FAQ
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/zanryu/zanryu06
・厚生労働省「食品中の残留農薬等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/index.html
・農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai.html
・Hussain A ほか「Evaluation of peel, flesh and seeds of bitter gourd (Momordica charantia L.)」Discover Applied Sciences 6巻432号(2024年)
https://doi.org/10.1007/s42452-024-06086-8
・農林水産省「農薬登録情報提供システム」
https://pesticide.maff.go.jp/
※果肉から農薬が検出された4種類は、イプロジオン・キャプタン・プロシミドン(いずれも殺菌剤/農薬登録情報提供システムに登録あり・2026年7月30日確認)と、シアノホス(殺虫剤/現在は登録なし)です。
