アラカン紳士が牛乳をやめた理由──“やさしい”食の見直しとヴィーガン的ヒント

ヴィーガン淑女
ヴィーガン淑女

以前から疑問だったのだけど、ヴィーガンが牛乳を飲まないのはなぜなの?
別に牛乳を飲んでも牛さんは傷つかないと思うのですよ。だって牛を殺すわけじゃないし。

アラカン紳士
アラカン紳士

マダム。牛乳は本来、仔牛が急速に大きくなるための飲み物ですよ。

アラカンになって牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロしたりしませんか?

はじめに:50代から見つめ直す「食」と「暮らし」

若い頃、「牛乳は骨を強くする」と信じて育った方も多いのではないでしょうか。

学校給食では毎日出され、「背を伸ばすために牛乳を飲め」と言われた時代もありました。

しかし、現代の栄養学では「牛乳は必ずしも必要ではない」「人によっては合わない」といった視点も一般的になってきました
実際、日本人の約8割が乳糖不耐症(※1)とされており、牛乳でお腹を壊す方も少なくありません。

アラカン世代になると、消化や体調に気を配るようになり、「本当に牛乳が今の自分に必要か?」という問いが自然に湧いてきます。
そこで出会ったのが、植物性ミルクや“やさしい食”という選択肢でした。

ヴィーガンは「完全菜食」ではなく、「思いやり」や「気づき」から生まれる生き方です。
このブログでは、同世代の方に向けて、心地よく無理のない“ゆるヴィーガン”な食のヒントをお届けします。

この記事で分かること
  • 牛乳は必ずしも健康に不可欠ではなく、人によっては合わない場合がある
     ─ 乳糖不耐症、アレルゲン、脂質過多など中高年に特有のリスクがあり、植物性食品からも必要な栄養は補える。
  • 牛乳にまつわる健康神話には再検討が必要
     ─ 「牛乳=骨に良い」という通説には疑問があり、最新の研究では過剰摂取が健康リスクと関連する可能性も。
  • ヴィーガンが牛乳を避けるのは動物福祉や環境保護の観点からも理にかなっている
     ─ 母牛と子牛の分離、メタンガス排出、水資源消費など、畜産の影響に配慮したライフスタイルが求められています。
  • 「ゆるヴィーガン」的な暮らし方は無理なく始められる
     ─ 週1の植物性ミルクから始めるなど、完璧を目指さずにやさしく続けられる選択肢があります。

牛乳を飲まないという選択肢、知っていますか?

「牛乳=健康」という図式は今では再検討されています

たとえば、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」でも、牛乳は必須の栄養源とはされていません。
カルシウムは小松菜や豆腐、しらす干しなどからも摂取可能です。

乳糖不耐症とは、乳糖(ラクトース)を分解する酵素が不足している体質で、特にアジア人に多いとされています。
加齢とともに乳糖の分解力はさらに低下するため、中高年では症状が出やすい傾向にあります。

また、ホルモン残留やアレルゲン、脂質過多のリスクも考慮され、牛乳を控える方が増えています。

📝 コラム:牛乳を飲むと骨が弱くなる?

「牛乳は骨に良い」と言われてきましたが、スウェーデンのミカエルソン博士らによる研究(BMJ, 2014)では、牛乳を多く飲む女性ほど骨折リスクや死亡率が高まる可能性があることが報告されました。
原因の一つとして、ガラクトースによる慢性炎症が疑われています。

また、植物性食品からでも効率よくカルシウムを摂取でき、動物性たんぱく質の過剰摂取はカルシウムの排出を促すとも言われています

骨の健康には、食事だけでなく、運動やビタミンDの摂取など、総合的な生活習慣の見直しが大切です。

ヴィーガンが牛乳を避ける主な理由

牛乳は身近な存在であり、長年「健康的な飲み物」として親しまれてきました。

しかし、ヴィーガンの人々が牛乳を避ける理由は、単なる健康志向にとどまりません
その背景には、動物との関わり方や環境への配慮といった、私たちがふだん意識する機会の少ない視点があるのです。

ここからは、牛乳のもう一つの側面について見ていきましょう。

動物福祉:母牛と子牛の現実

乳牛は搾乳のために繰り返し人工授精され、生まれた子牛はすぐに母牛から引き離されます。
特に雄の子牛は肉用として出荷されることも多く、「親子の絆を断たれる」という現実があります

この事実を知ったとき、私自身「食べることにこんな背景があるのか」と心を動かされました。

環境負荷:温室効果ガスと水資源

国連食糧農業機関(FAO)によれば、畜産業は世界の温室効果ガス排出の主要因の一つであり、乳牛のげっぷに含まれるメタンガスはCO2より強力な温暖化ガスです

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書では、牛由来のメタンガスが全温暖化ガスの5〜8%を占める可能性があると報告されています。
加えて、牛の飼育には大量の水や飼料が必要で、環境負荷は無視できません。

健康面のリスク:体質・ホルモン・アレルゲン

「動物性食品中の残留抗生物質の検出法に関する研究」では、乳製品に残留する抗生物質の種類と健康への影響が議論されています(※2)。
また、日本乳業協会も、牛乳タンパクがアレルギー症状を悪化させる場合があると認めています。

加えて、乳脂肪の摂りすぎによる飽和脂肪酸の過剰摂取も中高年の健康管理上で注意したい点です。

ヴィーガン的視点:「支配しない食」への気づき

ヴィーガンの考え方は、単に動物性食品を避けることだけを意味していません。

むしろ、「他の命を自分のために都合よく使うのは当然」という発想を見直すところから始まります。
そこには、支配しない」「搾取しない」という倫理的な視点が含まれており、それは“食”という日常的な行為を通して現れます

たとえば、牛乳を飲むという行為の裏側に、人工授精、親子分離、搾乳の繰り返しがあることを知ったとき、それまで無意識だった消費行動に「問い」が生まれる人もいます。

自分の選択が、他の誰かの苦しみに繋がっているのではないか」——そう思ったとき、食卓が静かに変わっていくのです。

これは“罪悪感”ではなく、“やさしさ”の延長線上にある変化です。
動物だけでなく、環境にも、自分の体にも優しくありたい。
その思いが「支配しない食」=ヴィーガンという選択肢を後押しするのです。

植物性ミルクの基本と選び方【初心者ガイド】

最近ではスーパーでも様々な植物性ミルクを見かけます。

ここでは、手軽に購入できる植物性ミルクの特徴は以下の様になっています。

目的に合わせて使用してください。

種類特徴栄養のメリット
豆乳日本人に馴染みが深い
料理に使いやすい
たんぱく質、イソフラボン豊富
アーモンドミルク軽くて飲みやすい
クセが少ない
ビタミンE、低カロリー
オーツミルクやさしい甘み
トレンド感あり
食物繊維、炭水化物
ライスミルク甘め
アレルゲンになりにくい
炭水化物、低脂肪

※選ぶ際は「遺伝子組換え不使用」「無加糖」などラベルもチェックしましょう。

【おすすめ豆乳】

【おすすめアーモンドミルク】

【おすすめオーツミルク】

【おすすめライスミルク】

無理なく始める「ゆるヴィーガン」的暮らし方

「毎日すべて植物性にしなければいけない」と思うと、かえってストレスになります。

週に1回だけヴィーガンデーを設ける、まずは牛乳だけ豆乳に替えてみる

そんな小さな一歩から始めるのも立派な取り組みです。

私自身も「完璧」ではありません。家族と同じ食事を楽しみつつ、自分の体調や気持ちを大切にしながら、ゆるやかに続けています。

周囲への配慮も大事にしつつ、誰かに押しつけることなく、「私はこういうのが心地いいんです」と言えるようになると、気持ちがとても楽になります。

実際、普段から豆乳を飲むようになると、たまに牛乳を口にすると「甘すぎる」と感じるようになりました。

最初はコーヒーに豆乳を入れるのに抵抗がありましたが、今ではカフェラテより、ソイラテの方が味が好きです。

よくある疑問【Q&A】

Q1. ヴィーガンって極端じゃないの?
そう思われがちですが、多くの人が「できる範囲で」取り入れています。完璧でなくていいのです。
骨は大丈夫?カルシウム不足にならない?
大豆製品、青菜、小魚などからもカルシウムは摂れます。バランスの良い食事が鍵です。
植物性だけで栄養は足りるの?
基本的に足りますが、ビタミンB12やDは強化食品やサプリで補うと安心です(※3)。
子どもの栄養には牛乳が必要?
必須ではありません。栄養バランスを考慮し、医師や管理栄養士と相談のうえ判断しましょう。

おわりに:「やさしい選択」が人生を軽やかにする

50代・60代という節目は、体の変化だけでなく、価値観や暮らし方を見つめ直す大切な時期でもあります。

若い頃の常識や習慣が、今の自分に本当に合っているのか――ふと立ち止まって考えてみるとき、「食」の見直しはその第一歩かもしれません。

牛乳をやめるという行為は、大げさに思えるかもしれませんが、実は自分の体にやさしく、動物や環境にもやさしい「静かな選択」です

それは誰かを責めるものではなく、自分自身との対話から生まれる前向きな選択。
「これまでこうしてきたから」ではなく、「これからどう生きたいか」という視点で食と向き合うことで、暮らしが少しずつ軽やかになっていくのを感じられるでしょう。

完璧である必要はありません

一歩だけ変えてみる、気づくだけでも十分です。このブログが、「ちょっとやってみようかな」「もっと心地よく暮らせる方法があるのかも」と思えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

※1 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版
※2 出典:農林水産省関連資料およびJ-STAGE研究報告
※3 出典:日本ベジタリアン協会・日本臨床栄養学会