
ヴィーガンって、お魚もいけませんの?
お肉より罪がない気がいたしますけれど…

定義の上では、お魚も立派に禁止食物の対象ですぞ
ただ、わたくし自身の答えは少々違いましてな…
順にお話ししましょう
はじめに ヴィーガンなのに魚を食べて良いの?

お肉はやめられたのに、お魚だけはどうしてもやめられない
ヴィーガンに興味を持った方から、私が一番よく聞く本音です。
お寿司も、かつおだしの効いたお味噌汁も、日本の食卓には当たり前にお魚がいます。
ヴィーガンになったら、お魚のある暮らしを全部手放すの?
と不安になるお気持ち、よく分かります。
先にお伝えすると、ヴィーガンの定義では魚も避ける対象です。
ただ、9年間「おおむねヴィーガン」を続けてきた私自身、正直に告白すると、今も週に一度ほどお魚を食べます。
本記事では、ヴィーガンと魚の関係を定義からきちんと整理し、魚を食べる「ペスカタリアン」との違いを表で比較したうえで、完璧を目指さない続け方について、私の本音を包み隠さずお話しします。
「魚が好きだからヴィーガンは無理」と諦める前に、ぜひ読んでみてください。
- ヴィーガンの定義で魚がどう扱われるか(かつおだし・魚醤の注意点も)
- ペスカタリアン・ベジタリアンとの違いが一目で分かる比較表
- 週に一度は魚を食べる筆者の本音と「おおむねヴィーガン」という考え方
- 魚をやめたい人のための栄養面(オメガ3)の現実的な代替策
ヴィーガンは魚を食べる?まず結論と基本の整理

ヴィーガンは魚を食べるの?
という疑問には、まず言葉の定義から整理するのが近道です。
結論を先にお伝えすると「定義上は食べない」ですが、魚を食べるペスカタリアンなど似た言葉との違いを知ると、全体像がすっきり見えてきます。
かつおだしや魚醤といった、日本の食卓ならではの見落としやすい注意点も合わせて確認しておきましょう。

結論からお伝えすると、ヴィーガンの定義では魚は食べません。
ヴィーガンとは、肉・魚・卵・乳製品・はちみつなど、動物性食品全般を避ける食のスタイルです。
牛や豚だけでなく、鶏も、魚も、貝もエビも、動物由来のものはすべて対象になります。
お魚はお肉とは別もの
と感じる方は少なくありません。
和食の世界では魚は身近な日常食ですし、
魚くらいは大丈夫では
という感覚は自然なものです。
けれど定義に立ち返れば、魚も命ある動物からいただく食品であり、牛肉や豚肉と同じ「動物性食品」に分類されます。
だからこそ「ヴィーガンは魚を食べる?」という疑問への教科書的な答えは「食べない」です。
ただし、実際の暮らしの中での付き合い方は人それぞれです。
まずは基本の線引きを押さえておきましょう。

魚の切り身を避けるだけでは、実は不十分です。
日本の食卓には、目に見えない魚由来の成分がたくさん潜んでいます。
代表格はお味噌汁のかつおだし。
ほかにも、めんつゆ、にぼし粉末入りの味噌、タイ料理でおなじみのナンプラー(魚醤)、お好み焼きにかけるかつお節など、挙げればきりがありません。
厳密なヴィーガンの方は、かつおだしやナンプラーも避けて食事を組み立てます。
外食で「野菜のおうどん」を頼んでも、つゆがかつおだしという場面は本当によくあります。
家庭で代わりになるのは、昆布だしと干し椎茸のだしです。
昆布と干し椎茸を合わせると旨みが掛け算になり、かつおだしに負けない深い味わいが出ます。
「だしまで気にするのは大変」と感じたら、まずは家のお味噌汁を昆布だしに替えてみる。
小さな一歩からで十分です。

肉は食べないけれど、魚は食べるというスタイルには、ちゃんと名前があります。
ペスカタリアンです。
肉を避けつつ、魚介・卵・乳製品は食べる食のスタイルで、和食との相性が良いこともあり、日本人には取り入れやすい選択肢といわれています。
ヴィーガン・ベジタリアンとの違いを表で整理してみましょう。
| 肉 | 魚介 | 卵・乳製品 | |
|---|---|---|---|
| ヴィーガン | ✕ | ✕ | ✕ |
| ベジタリアン | ✕ | ✕ | ○ |
| ペスカタリアン | ✕ | ○ | ○ |
| シーガン | ✕ | ○(持続可能なもの) | ✕ |
表を見ると、「魚を食べるかどうか」がヴィーガンとペスカタリアンの大きな分かれ目だと分かります。
聞き慣れない「シーガン」というスタイルは、後ほどコラムで紹介します。
大切なのは、どのスタイルが上でどれが下、という話ではないという点です。
ご自身の暮らしと価値観に合う場所を選べばよく、途中で行き来しても構いません。
私自身の立ち位置も、後の章でお話しします。
ヴィーガンが魚を食べない3つの理由

牛や豚だけでなく、なぜ魚まで?と疑問に思う方は多いはずです。
理由は大きく分けて3つあります。
- 倫理
魚も痛みを感じる可能性がある - 環境
世界的な獲りすぎで海の資源が減っている - 健康
水銀やマイクロプラスチックなど海洋汚染の影響
順番に、なるべく手短に見ていきます。

魚は痛みを感じないから食べても平気
長く信じられてきた前提が、近年揺らぎつつあります。
魚の体にも痛みの信号を受け取る「侵害受容器」と呼ばれるセンサーが備わっている、とする研究が増えているためです。
マスの口元に刺激を与えると呼吸が速くなり、しばらく餌を食べなくなった、といった観察も報告されています。
もちろん、魚が人間と同じように痛みを感じていると断定できる段階ではありません。
ただ「感じていないとは言い切れない」となった以上、
牛や豚と魚のあいだに線を引く根拠は薄くなった——。
多くのヴィーガンが魚を避ける、いちばん根っこにある理由です。

2つめは、海の持続可能性です。
国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、世界の水産資源のうち3分の1以上がすでに「獲りすぎ」の状態にあり、余裕をもって獲れる資源はごくわずかになっています。
魚が減れば、魚を食べる海鳥や海の生きものたちも連鎖的に影響を受けます。
「海は広いから大丈夫」と思いたくなりますが、実際の海には限りがあります。
持続可能性の観点から魚を控える人が増えている背景です。

有名なところでは、
・ニホンウナギ
・太平洋クロマグロ(本マグロ)
・サンマ
・スルメイカ
などが持続が難しいとされています。
畜産と環境の問題は、下の記事で詳しく書いています。
陸側の話が気になる方は、あわせて読んでみてください。

3つめは、体への影響を心配する声です。
マグロやカジキなど食物連鎖の上位にいる大型魚には、海水中の水銀が蓄積しやすいことが知られています。
厚生労働省も、妊娠中の方に向けて大型魚の摂取量の目安を示しているほどです。
さらに近年は、海に流れ出たマイクロプラスチックが魚介類から検出されたという報告も増えてきました。
健康への影響はまだ研究の途上で、「魚=危険」と考える必要はまったくありません。
ただ、海の汚れがめぐりめぐって食卓に届くという現実を知り、
魚と距離を置く選択をする人がいる
という事実は、押さえておきたいポイントです。

「シーガン(seagan)」という言葉をご存じでしょうか。
sea(海)とveganを組み合わせた造語で、2016年頃から海外で使われ始めました。
意味は「持続可能な方法で獲られた魚介類だけは食べるヴィーガン」。
卵や乳製品は口にしない点が、ペスカタリアンとの違いです。
「野菜中心の暮らしは続いているのに、魚だけはやめられない。自分は中途半端かも……」
と悩む方は少なくありません。
でも、迷いながら続けているスタイルには、ちゃんと名前がついています。
完璧じゃなくても大丈夫。
魚とつかず離れず歩む道も、立派なひとつの形です。
正直な告白|ヴィーガンの私が魚を食べる理由

ここからが、本記事でいちばんお伝えしたかった話です。
教科書的な定義を整理してきましたが、私自身の食卓は、教科書どおりではありません。

植物性中心の暮らしを続けていると、多くの人が同じ場所でつまずきます。
魚です。
理由は暮らしの中にあります。
まず、外食の壁。
イタリアンなどでヴィーガン対応の一皿がないお店は、まだまだ多いのが現実です。
次に、いただきものの壁。
田舎暮らしでは、釣ったお魚やお裾分けをいただく機会が本当に多く、無下にはできません。
そして、体の声。
植物性の食事が続いたとき、変化と栄養のバランスを求めて魚に手が伸びることがあります。
どれも意志が弱いからではなく、日本で暮らしていれば自然に訪れる場面です。
魚が「最後の境界線」になっているのは、あなただけではありません。

正直に数字を言うと、私がお魚をいただくのは週に一度ほど。
・出先でヴィーガンの選択肢がないとき
・ご近所からお魚をいただいたとき
・植物性の食事が続いて栄養の偏りが気になったとき
いずれの場面でも、迷わず、美味しくいただいています。
罪悪感で箸を重くするのではなく、命への感謝で箸を持つ。
決めているのは、感謝の一点だけです。

実は私の食卓には、小さな言葉の札をひとつ置いています。
「功の多少を計り彼の来処を量る(こうのたしょうをはかり、かのらいしょをはかる)」
禅寺で食事の前に唱えられる「五観の偈(ごかんのげ)」の最初の一節で、「食事が届くまでの手間と、命がどこから来たのかを思いなさい」という意味です。
魚をいただく日ほど、一節の重みが増します。
一匹の魚が海で生き、誰かの手で獲られ、私の食卓まで届いた——道のりを思うと、自然と箸がていねいになるのです。
「来処」を思うからこそ、選び方にもこだわりが生まれました。
自分で魚を選ぶときは天然物・国産のものにしています。
海の資源への負担が少しでも軽い選択を、と考えてのことです。
もちろん、ウナギやクロマグロのような、資源が心配される魚はなるべく選びません。

私たちは、動物であれ植物であれ、他の命を犠牲にしなければ生きられません。
ヴィーガンを9年続けて辿り着いたのは、
犠牲をゼロにはできない。でも、なるべく少ないほうがいいよね
という、拍子抜けするほど普通の温度感でした。
だから基本の食卓では生き物を食べません。
そして例外の日があっても、自分を責めません。
0か100かで考えると、99点の日々が「失敗」になってしまいます。
完璧な1週間より、おおむね植物性の10年。
長く続けるための現実的な答えだと思っています。
「おおむね」という考え方は、下の2記事でじっくり書いています。
完璧主義で苦しくなったときに、読んでみてください。

週に一度も魚を召し上がって、ヴィーガンを名乗ってよろしいんですの?

だからわたくしは「おおむね」ヴィーガンと名乗っておるのですぞ
看板に偽りなし、というわけです
魚をやめて一番困る栄養|オメガ3の現実的な補い方

魚を減らすとき、栄養面で唯一しっかり考えておきたいのがオメガ3脂肪酸です。
と言っても、私が毎日やっているのは「油をひとさじかける」だけの簡単な習慣です。
基本の考え方から、えごま油・亜麻仁油の使い分け、サプリという選択肢まで順番に紹介します。

魚を控えるとき、いちばん気がかりなのがオメガ3脂肪酸のDHA・EPAではないでしょうか。
青魚に多く含まれ、脳や血管の健康に関わるとされる栄養素です。
植物にもオメガ3は含まれていますが、形が違います。
えごま油や亜麻仁油、くるみなどに含まれるのはALA(α-リノレン酸)。
ALAは体内でDHA・EPAに変換されますが、変換率は数%程度と低いとされます。
だからこそ、私がたどり着いた答えは二段構えです。
ひとつは、毎日コツコツALAを摂ること。
もうひとつは、必要に応じてDHAを直接摂ること。
変換頼みだけに賭けず、直接ルートも確保しておく。
難しい話に見えて、実践はとてもシンプルです。

ALA補給の定番が、えごま油と亜麻仁油です。
どちらも小さじ1杯(約4g)で、1日のオメガ3摂取目安量をほぼ満たせるとされます。
小さじ1杯なら、続けるハードルはぐっと低くなります。
注意点はひとつだけ。
えごま油も亜麻仁油も加熱に弱いので、炒め物には向きません。
「かける・混ぜる」が基本です。
朝の味噌汁に垂らす、ヨーグルトに混ぜる、サラダにかける。
食卓に瓶を置いておけば、習慣は自然と回り始めます。
私は、えごま油と亜麻仁油の両方を常用しています。
香りや価格、続けやすさにはそれぞれ個性があるので、両方を使い続けて分かった違いを下の記事にまとめました。
まずはどちらか1本、台所に迎えてみてください。

変換率が低いなら、やっぱり魚を食べないとDHAは摂れないのでは?
と思われるかもしれません。
実は、意外な事実があります。
魚のDHAは、もともと魚自身が作っているのではなく、餌である微細藻類に由来するとされているのです。
魚は、藻のDHAを体に蓄えた「中継地点」だったわけです。
だとすれば、魚を経由せず、藻から直接DHAをいただく道もあります。
実際、藻由来のDHAサプリメントが販売されていて、動物性原料を含まない製品ならヴィーガンでも使えます。
「魚を食べないとDHAがゼロになる」わけではないのです。
魚をやめようか迷っている方にとって、藻由来DHAの存在は、大きな安心材料になるはずです。

「魚を食べない食事」と聞くと外国発の特別な食生活に思えますが、実は日本の伝統の中にすでにありました。
禅寺の精進料理です。
肉も魚も使わない食事の文化が、数百年にわたって受け継がれてきました。
だしは昆布と干し椎茸。
タンパク質は豆腐・湯葉・味噌といった大豆製品。
魚介に頼らずとも、深い旨味と満足感のある食卓が成立することを、お寺の台所は何百年も前から証明していたのです。
ヴィーガンは外来の特殊な食事ではなく、日本人が昔から知っていた食べ方の延長線上にあります。
精進料理が、静かに私たちに教えてくれます。
ヴィーガンと魚のQ&A

最後に、ヴィーガンと魚について、よくいただく質問にお答えします。
- お寿司屋さんでの会食は、どう乗り切ったらいいですか?
- かっぱ巻き・納豆巻き・いなり寿司・かんぴょう巻きなど、魚を使わないお品は意外とあります。
玉子を避けたい場合は注文時にひと言添えれば大丈夫です。
完璧を求めすぎず、「会食は人と楽しむ場」と割り切る考え方もあります。
- 加工食品の「魚介エキス」は、どう見分けたらいいですか?
- 原材料表示を見る習慣をつけるのが近道です。
「魚介エキス」「かつおぶし粉末」「魚醤」「煮干し」あたりが要チェックの言葉。
よく買う商品は決まってくるので、慣れれば数秒で確認できるようになります。
- かつおだしの味噌汁を出されたら、断るべきですか?
- 断らなければいけない、という決まりはありません。
作ってくださった方の気持ちを大切にして、ありがたくいただくという選択もあります。
どこまで受け入れるかは、ご自身の線引きで決めて大丈夫です。
- 子どもも魚なしで大丈夫ですか?
- 成長期はDHAが特に大切な時期とされるので、大人以上に配慮が必要です。
藻由来DHAの活用に加え、小児科医や管理栄養士など専門家への相談をおすすめします。
家族全員に同じ食事を無理に求めない柔軟さも大切です。
- ペスカタリアンから始めてもいいですか?
- もちろんです。
むしろ現実的な入口だと思います。
肉をやめて魚は残す段階を経てから、少しずつ植物性中心へ移っていく人は多くいます。
最初から100点を目指すより、続けられる一歩から始めるほうが、結果的に長く続きます。
おわりに|魚との距離は、自分で決めていい

魚を食べるか、食べないか。
答えは0か100かのテストではありません。
週に一度だけいただく人も、外食のときだけ受け入れる人も、きっぱりやめる人も、みんな正解です。
境界線は、自分で引いていい。
そして、暮らしや体調が変われば、引き直したっていい。
私自身、線を行き来しながら今の形に落ち着きました。
完璧なヴィーガンが1人増えるより、ゆるく続ける人が100人増えるほうが、海の資源も動物たちも、ずっと多く救われるはずです。
あなたと魚とのちょうどいい距離を、今日から少しずつ探してみませんか。
参考・出典
・The Vegan Society「Definition of veganism」(ヴィーガンの定義)
https://www.vegansociety.com/go-vegan/definition-veganism
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(n-3系脂肪酸の摂取目安量)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
・厚生労働省「魚介類に含まれる水銀について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/
・FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture(SOFIA)」(世界の漁業資源の状況)
https://www.fao.org/publications/sofia/en/
